今回は、ストレスによるニキビへの影響について説明していきます。
「あなたは、日常的にストレスを感じることはありませんか?」
実は、ニキビとストレスとの関係はずっと昔から指摘されてきました。
ある報告によると”約8割のニキビ患者が日常的にストレスを感じていた”そうです。
ストレスは切っても切れないものですから、前向きに対処していく必要があります。
そこで、今回はストレスニキビの治し方について説明していきます。
目次
なぜストレスがニキビの原因に?ストレスでニキビができるメカニズム
まず、脳にある大脳皮質や視床下部がストレスによる刺激を受けます。
ストレス時にはcorticotropin-releasing hormone(CRH)が増加し,視床下部―下垂体―副腎皮質系が亢進する。
男性化徴候を伴わない本邦の女性痤瘡患者において,視床下部―下垂体系の軽度の機能異常を認める症例があり,そのことがストレスによる痤瘡病態の悪化と関連があることが示唆された。
(引用元:思春期後発症の女性痤瘡患者におけるcorticotropin-releasing hormone(CRH)試験による視床下部―下垂体系の機能異常)
大脳皮質とは、よくイメージするシワシワの部分のことです。
一方の視床下部というのは、”自律神経を調節する役割がある部位のこと”です。
そこがストレスを受けると、ホルモンバランスが乱れます。
ホルモンバランスと言っても、ホルモンの種類は色々あります。
少し専門的になってしまうので、ここでは省きますが、複数のホルモンバランスが分泌されると覚えておいてください。
その内のひとつが男性ホルモンの一種である”アンドロゲン”です。
Androgens stimulate proliferation of keratinocytes, size of sebaceous glands and sebum secretion.
(訳:アンドロゲンは、ケラチノサイトの増殖、皮脂腺の大きさおよび皮脂分泌を刺激する)
このアンドロゲンは、”過剰な皮脂分泌”や”角化異常”を引き起こします。
角化異常というのは、”肌が厚くなって毛穴が詰まりやすくなってしまう状態のこと”です。
つまり、このホルモンが多く分泌されると、ニキビができやすくなってしまいます。
そして、その引き金はストレスが元となっていることがわかります。
また、他のホルモンも皮脂の分泌を促進してしまうので、ニキビの悪化に関わっています。
これがストレスがニキビの原因になるメカニズムです。
<参考文献>
林伸和 宮地良樹 (2016)にきび治療薬編 株式会社メディカルレビュー社
佐藤 優子, 相澤 浩, 新村 眞人 (2002)思春期後発症の女性痤瘡患者におけるcorticotropin-releasing hormone(CRH)試験による視床下部―下垂体系の機能異常
ストレスが別のニキビの原因を引き起こすことも
ストレスそのものがホルモンバランスを乱してニキビの原因になることは説明しました。
しかし、他にもストレスが原因で別のニキビの原因を生み出してしまうケースもあります。
1.睡眠不足
ストレスによって、交感神経が優位になることはよく知られています。
しかし、これは睡眠時に眠れなくなる要因にもなります。
なぜなら、寝るときはリラックスした副交感神経優位になるからです。
ストレスで眠れない経験がある人も多いと思いますが、自然なことです。
しかし、”睡眠不足はニキビにも影響”します。
睡眠はコルチゾールというホルモンを抑制するのですが、睡眠不足になるとその抑制がかからなくなります。
”コルチゾールは皮脂の分泌を促進すると考えられているので、ニキビを悪化させる要因”となります。
2.暴飲暴食
ストレスを感じると、暴飲暴食に走る人もいます。
尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017では、食生活については詳しく言及していません。
痤瘡患者に、特定の食べ物を一律に制限することは推奨しない。個々の患者の食事指導においては、特定の食物摂取と痤瘡の経過との関連性を十分に検討して対応することが望まれる。
(引用元:尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017)
現時点では、特定の食べ物がニキビの原因になっているという根拠はありません。
しかし、”理屈としてはじゃがいもや砂糖、アルコールなどを取りすぎると、皮脂の分泌量が増加”します。
ちなみに砂糖については、ニキビと関係しないと報告がされています。
”ストレスを感じたときは、別のストレス解消法に切り替えた方がいい”でしょう。
3.ニキビを潰す・肌をひっかく
ストレスを感じると、ニキビを潰したり皮膚をひっかいたりする人も多いです。
実はこの行動は、”皮膚むしり症(スキンピッキング)”という精神障害の一種です。
皮膚むしり症の患者は,美容以外の理由で(すなわち,患者が魅力的でない,または癌ではないかと思い込んだ病変を除去するためではない)皮膚を繰り返しむしる,または掻破する。健康な皮膚をむしる患者もいれば,胼胝,ざ瘡,または痂皮などの軽微な病変をむしる患者もいる。
”肌をひっかくことがニキビの原因になるメカニズムは触れ続けている部分の表皮が厚くなることで、毛穴が閉塞”しておこります。
バイオリニストの方がフェイスラインにニキビができやすいのも同じ理屈です。
ストレスニキビの治し方
1.1日2回の洗顔は欠かさない
”ストレスがニキビの原因になると解説しましたが、その1つは皮脂の分泌を促進すること”でした。
つまりその皮脂を定期的に取り除くことができれば、ニキビ予防につながります。
ニキビに洗顔は当たり前のこととして受け入れられていますが、実は尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017でも選択肢の1つとして推奨されている予防方法の1つです。
座瘡患者に1日2回の洗顔を推奨する。
(引用元:尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017)
また適切な洗顔回数についても、統計的な検証がおこなわれています。
結果として、”洗顔の回数によるニキビの数の統計的な有意差はありません”でした。
しかし、”1日2回から1回に変更したときに悪化した症例や1日4回だとできない人が多く、結果として2回が適切と判断”しています。
ストレスが原因のニキビにおいても、1日2回の洗顔は欠かさないようにしてください。
2.皮膚科で扱っている薬を使う
ストレスによるニキビにおいても、”皮膚科へ行って治療をおこなうべき”です。
皮膚科での治療は科学的な根拠に基づいた効果的な治療で、保険が適用されるので3割負担で受けられます。
よく皮膚科の治療は効果がないと言っている人がいますが、”大規模な実験や統計的な検証をして有効と判断した薬が使われているので、高い化粧品を購入するよりもよっぽど皮膚科へ行った方が良い”です。
ニキビに強く推奨されている薬は「ディフェリンゲル」や「ベピオゲル」といった薬がありますが、この2つも大規模な実験が行われています。
結果として赤ニキビも白ニキビも減少することがわかっているので、使わない手はありません。
ストレスが原因のニキビといっても、放置していたらニキビ跡になる恐れもあります。
必ず皮膚科へ行って、薬を手に入れましょう。
3.保険適用外の治療をする
保険適用外の治療は保険が適用される治療をおこなって効果がなかった場合におこないましょう。
保険適用外の治療は色々ありますが、ストレスニキビと相性が良さそうなのは以下の2つです。
- ホルモン治療
- 漢方
それぞれ解説していきます!
ホルモン治療
ホルモン治療は、海外で重症ニキビ向けにおこなわれる治療です。
日本では未認可ですが、一部の美容皮膚科ではおこなわれています。
女性限定の治療になりますが、”ストレスによるホルモンバランスの乱れに対処可能”です。
ホルモン治療にも色々あって、ピルを利用したものやスピロノラクトンという男性ホルモン抑制薬を使ったものがあります。
女性の方で普通皮膚科で治らなかったという方は試してみてください。
ピルを使ったホルモン治療はニキビに効果抜群!?副作用も少なめ
漢方薬
漢方薬は「尋常性ざ瘡治療ガイドライン2017」でも、選択肢の1つとして推奨されている治療方法です。
尋常性ざ瘡治療ガイドラインでは、”荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)や清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)、十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)が選択肢の1つとして推奨”されています。
(引用元:標準的皮膚治療に抵抗性の座瘡に対する漢方治療の有効性の検討)
ただ実際にはこの3つ以外にも有効性を示す報告もされています。
尋常性ざ瘡治療ガイドラインで挙げられているのは、”特に科学的な根拠が示されている薬”です。
漢方薬局に行けば、幅広い漢方の中から適切なものを選んでいただけるでしょう。
特に体質や肌質なども考慮にいれて、薬が選定されます。
より詳しいニキビの治し方については「3ヶ月で治すニキビの治し方講座」を参考にしてください。
まとめ
ストレスは、ニキビと密接に関わっている原因の1つです。
人によってはストレスの解消法をするだけで、ニキビが大きく改善するということもあるでしょう。
ただし、ストレス解消法にこだわりすぎても、ニキビは良くなりません。
必ず基本的なニキビの治し方を実践するようにしてください。
では、ストレスニキビに悩んでいる人は参考にしてみてください。